前回は資本主義社会に生きている限り、「時代とともに物価は上がっていく」という話をしました。今回はその続きで、時代とともに物価が上がり、それに伴って世の中に流通するお金の量は「増えなければならない」という話をします。
もしまだ前回の記事を読んでいない場合は、先に前回記事を読んでからこの記事を読むことをおすすめします。
すでに前回記事を読んだ後であれば、この記事も非常に重要な内容となりますので、ぜひ最後まで記事をお読みください…
今や一家に一台が当たり前のテレビ。だけど昔は高嶺の花すぎて買えなかったって信じられる?
なぜ時代とともにお金の量が増えなければならないのか?その理由は「お金の量が増えないと、より便利な世の中にならないから」です。
これを説明するために、昭和時代にテレビが発売された時のことを例に挙げましょう。
ネットで調べてみると、日本で初めてテレビが発売されたのは昭和28年(1953年)。この時、サラリーマンの月給が約3万円だったのに対して、テレビは30万円前後もしたそうです。もちろん、月給の10ヶ月分もするテレビなんて、普通の人に買えるわけありません。なのでそれからしばらくの間、テレビは家庭で見るものではなく、駅前や繁華街などに設置されてみんなで見るものだったようです。
それから約70年経過し、今ではテレビなんて一家に一台は当たり前。かつてはテレビなんて高嶺の花すぎて手も出なかったのに、今では普通にどの家にも置いてあります(それどころか、すでに時代遅れになりつつありますよね)。
何で、国民みんながテレビを買えるようになったのでしょう?その要因の1つが「テレビが安くなったこと」。テレビを製造する技術が上がったり、大量生産することでコストカットしたりと、テレビをできるだけ安く売るために企業側が頑張った部分も大きいです。
でも、それだけでみんながテレビを買えるようになるでしょうか?そんなはずないですよね?実際、今の時代でもテレビは安いもので2〜3万円くらいはします(当時と比べてかなり高機能になりましたけどね)。サラリーマンの月給が70年前と変わらなければ、今の時代でも庶民にテレビは高嶺の花だったはずです。
そして、誰も買えない状況が続いたとして、メーカーはそれでもテレビを作り続けるでしょうか?きっとどこかで「これ以上作る価値がない」と判断して、テレビの製造を止めてしまっていたのではないでしょうか。そしてテレビという「文明の利器」は世の中から消滅してしまって、日本人の生活は何も変わらず、月給3万円の時代が続いていたはずです。
では、なぜ一般庶民がテレビを買えるようになったのか?手持ちのお金が増えたからです。実際、2025年の日本人の平均年収は429万円。月給に換算すると35万7500円と、70年前より約12倍ももらえるようになっています。これだけ給料がもらえるようになれば、3万円程度のテレビなら「ちょっと頑張って買おう!」って気になりますよね。
世の中に新しい価値が広まっていくには、お金の量が増える必要がある
こうしてテレビが一般家庭に広まって、「一家に一台」の時代がやってきます。でも、テレビって1回買って終わりじゃありません。テレビが壊れたら修理しなければなりませんし、新製品がどんどん発売されるのでいずれ買い替えなければなりません。つまり、テレビが本当の意味で「一家に一台」となるには、テレビの修理や買い替えができるだけのお金が一般家庭に備わっている必要があるのです。
テレビの発売後もずっと月給3万円の時代が続いたとして、そんなこと可能でしょうか?ちょっと考えられないですよね。テレビを修理したり、新しいテレビを買ったとしても生活できるくらいのお金がないと、テレビを家に置き続けようとは誰も思わないはずです。なので「テレビが一家に一台になる」ということは、「それができるくらい一般家庭のお金が増える」と同義ということになります。別の言い方をすれば、世の中に新しい商品やサービスが広まっていくためには、世の中に流通するお金の量が増える必要があるのです。
逆に世の中のお金の流通量が増えなければ、新しい商品やサービスが一般家庭に根付きにくくなり、その商品やサービスは廃れていってしまいます。ということは、世の中のお金が増えないと、いくら待っても便利な世の中になっていかない…ということになるのです。
第二次対戦後に日本のお金を増やしたのは一体誰?
では、この約70年間で日本のお金を増やしたのは一体誰なんでしょう?その正体をお話するにあたって、まずは第二次大戦直後の日本の状況から話を進めていきます。
敗戦直後。日本中のあらゆるインフラが焼かれてしまっていて、国民は働くどころか食べるものにも困っていた時代。
この時代に日本へ支援をしたのは主にアメリカです。ガリオア・エロア基金というものが有名ですが、食料から医療品、石油、機械などが供給されて、それらから得た代金が国内のインフラの復旧に充てられました。
このガリオア・エロア基金は1951年に終了するのですが、その後も朝鮮戦争の特需(軍需物質や関連サービスなどの注文が日本に大量に入ってきた)によってアメリカからのお金が日本に入り、神武景気と呼ばれる第二次対戦後最初の好景気が発生しました(1954〜1957年)。いわゆる「三種の神器(冷蔵庫、洗濯機、白黒テレビ)」が世の中に誕生したのも、このあたりです。
その後1964年の東京オリンピック開催に合わせて、オリンピック景気というものがやってきます(1962〜1964年)。首都高速や新幹線ができたり、国立競技場や日本武道館ができたりと、建設需要がすごく高かった時代です。この時期に多くの国民がオリンピックを見るためにテレビを購入したことも、好景気の要因の1つとされています。
しかし東京オリンピックが終わると、その反動で建設需要もテレビの需要もなくなり、日本は一気に不況になっていきます。この不況で税収が不足してしまったため、財政支出を補うために戦後最初の赤字国債が1965年に発行されました(いわゆる「政府の借金」です)。その赤字国債を主に銀行が購入することで政府の資金が増えて、その資金を政府が公共事業や給付金などに使います。こうして、政府が赤字国債を発行すると民間にお金が流れ、結果として世の中に流通するお金の量が増えることになります。
つまり、日本に流通するお金を増やした正体は、第二次大戦直後はアメリカ、高度成長期以降は日本政府というわけですちなみに、日本政府はその後も赤字国債を発行し続けていています(財務省作成の資料:PDF2枚目 資料Ⅰ-1-1を参照)。その結果、世の中に流通するお金が増えに増えて、2025年現在日本人の平均年収429万円にまで増えたということになります。
もし、日本政府が赤字国債を発行しないで今までやってきていたら、今頃どんな世の中になっていたでしょう?いまだに平均年収が100万円に満たないという世の中もあり得たのではないか?と個人的には思います。



コメント